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プレリュード

来日オーケストラの横顔的感想~第2回  by DORADORA

(音楽メルマガ 月刊《コン・フォーコ》 2007年12月号記事 音楽雑貨店♪プレリュード

 9月から3ヶ月間多忙といいつつ、実はコンサートだけはしっかりたくさん聴きに行っていました。しかも、この秋はどのオケ・オペラもとてもいい演奏が多く、どれを書いていいか分からなくなってしまったので、今回は聴きに行ったすべての海外オケ・オペラの簡単な感想を書いてみたいと思います。

<オーケストラ>

音楽雑貨専門店プレリュード 月刊コンフォーコ記事
トスカニーニ交響楽団 L・マゼール指揮、Vn五嶋龍 9月12日(水)サントリーホール 
曲目 ロッシーニ歌劇「絹のはしご」序曲、パガニーニVn協奏曲第1番、レスピーギ「ローマの噴水」、「ローマの松」

 楽団創設数年(ファーストコンサートは2002年6月)のオケとは思えないくらいの高い技術で、イタリアのオケなのでもう少し個人個人が勝手気ままに演奏するのかと思いきや、結構まとまりが取れていて、スマートな音を出すオケでした。前回来日時はチケット価格がS席1万円代ではなかったと思いますが、今回は五嶋龍効果と合わせてS席2万5千円まで高騰しました。でも、それに見合ったいい演奏が聴けたと思います。

 特に、ローマの松のアッピア街道(最終楽章)は迫力があって圧巻でした。あと、五嶋龍についてですが、Vnの音自体はすっきりとした比較的明るい音色で、音の抜けが良く、技術レベルも高いなと思いました。あと、少し生意気っぽいところがあると思いますが、20才前にしてあのステージ度胸のよさには感心させられました。


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ヴッパータール交響楽団 上岡敏之指揮・ピアノ 10月10日(水)東京オペラシティ
曲目 R・シュトラウス「ドン・ファン」、モーツァルトピアノ協奏曲第21番、ベートーヴェン交響曲第5番「運命」

 批評家の宇野功芳氏が絶賛していたので、聴きに行ってみました。オケはドイツのオケらしく力強く重厚な響きで、粗っぽさはありますがなかなか迫力はありました。ただ、上岡氏については、特に絶賛されているほどの感銘は受けなかったというのが理屈抜きで、正直な感想です。でも、チケットがS席でも9千円を考えるととてもお得な演奏会であったことは間違いありません。


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ベルリン・シュターツカペレ D・バレンボイム指揮 10月12日(金)サントリーホール

曲目 マーラー交響曲第9番

 2年半前に聴いたときより音が国際化してきたというのか、さらに垢抜けてきていて、旧東独のオケ特有の渋さ、重厚さというのが影を潜めた感じがしました。弦楽器の厚み、うねりなどは依然として素晴らしく、金管の音の強さ、音色の明るさが以前より増したように感じられました(個人的にはあまり好ましくありません)。

 オケの技術レベルはもちろん高く、バレンボイムとの呼吸も合っているので素晴らしい演奏だとは思いましたが、自分の中では今ひとつ強い感動を味わえませんでした。自分自身があまり普段マーラー9番を聴かないし、特に好きな曲ではないということは原因のひとつだとは思います。ただ、あと一歩何かが足りないという感じを受けてしまいました。


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ミュンヘン・フィル C・ティーレマン指揮 11月3、4日(土、日) サントリーホール

曲目 3日 R・シュトラウス「ドン・ファン」「死と変容」、ブラームス交響曲第1番
   4日 ブルックナー交響曲第5番

 今年聴いた中で、文句なく一番感動した演奏でした。というか、今までの人生の中でも3本の指に入るくらい感動した演奏でした。オケ自体は、音色は金管の柔剛自在の響きに特に強い印象を受けたが、木管もそれに負けないくらいの強い響きを持っていたし、弦楽器も重厚で緻密なアンサンブルをしていたという印象を受けました。

 でも、音色・技術自体は正直、自分の中ではウィーンフィル、バイエルン放響、ドレスデンシュターツカペレがベスト3だと思っています(ベルリンフィルはラトルがやめて、ティーレマンになれば一番かも)。しかし、指揮者を含めた演奏という点で自分が心から感動した演奏はこれらのオケの演奏でないものが結構多いのです。

 今回もそうで、指揮者やオケの力量だけでなく、両者の曲への思い入れ・愛情(大切に思う気持ち)の強さというのが、自分が本当に感動できる演奏に出会うためには非常に重要なポイントではないかということを改めて感じさせられたような気がしました(詳しい感想はバイエルン放響とのブラームス、ブルックナー演奏の比較を後日改めて寄稿する予定です)。


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パリ管弦楽団C・エッシェンバッハ指揮、Vn諏訪内晶子11月8日(木)サントリーホール

曲目 チャイコフスキーVn協奏曲、ラヴェル「ラ・ヴァルス」、ストラヴィンスキー バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)、アンコール ラヴェル「ボレロ」

 やはり諏訪内さんのVnはすばらしい。このために聴きに行ったようなものです。今回もチャイコフスキーのロマンティックな音楽を透明感のある音色で切々と表現してもらいました。一方オケはというと、2年半前にM・プラッソン指揮のパリ管の音を聞いた時にはいかにもフランス・パリらしい香りが会場いっぱいに広がったような印象を受けたのですが、今回はドイツ人指揮者になってずいぶんパリ管らしさがなりを潜めた感じがしました。

 悪いわけではないのですが、フランスらしい華麗で軽妙な感じの音は普段あまり好きでない私が少し残念に感じたくらいですから、パリ管らしい音を愛する人にはつまらなかったのではと感じました。

 ただ、アンコールでパリ管のボレロを聴けたのは非常においしかったと思います。ボレロが奏者の体にしみ込んでいる感じで、途中指揮者が一時的に棒を振らずにオケに演奏を託した時も、奏者各自の感覚で素晴らしい演奏をしていました。


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ドレスデンシュターツカペレ F・ルイジ指揮、ソプラノ C・ニールンド、メゾ・ソプラノ A・ヴォンドゥング 11月12日(月) サントリーホール

曲目 マーラー交響曲第2番「復活」

 ドレスデンの音は大好きです。マーラー交響曲第2番も大好きで、演奏会前にたくさんCDを聴いて楽しみにしていきました。でも、つまらない演奏会でした。

 確かに、オケも指揮者も一流で、実際の演奏もレベルは高い。演奏後の拍手だってかなりのものがありました。でも、私にはルイジはまだこのオケの魅力を十分に掴めていないし、引き出せていないように感じました。また、このオケはマーラーに対する思い入れがないというか、大事にしていないのかなという印象も受けました。自分にとっては今回の演奏はうまくても、感動できない演奏の典型だったような気がして非常に残念でした。



バイエルン放送交響楽団 M・ヤンソンス指揮、Vn S・チャン11月19、23日(月、金)サントリーホール
曲目 19日 R・シュトラウス「ツァラストラはかく語りき」ブラームス交響曲第1番
   23日 ブルッフVn協奏曲、ブルックナー交響曲第7番

 このオケと指揮者も2年前にはじめて聴きに行ったとき、あまりの音の美しさに公演後にもう一回チケットを購入し、続けて聴きに行ったほどのお気に入りです。今回もその音の美しさにやはり感動しました。

 ただ、感動したのは「オケの音」にです。ヤンソンスはそのオケの特質を活かして、無理に自分のスタイルに持ち込もうとはせず、オケが気持ちよく演奏できる指揮者ではないかと感じます。それはそれでとても素晴らしいことだと思いますが、逆に言えば、指揮者としての個性を抑えてしまい、いまいち曲そのものに感動できなくしてしまっているのではと今回感じました。

 以前コンサート会場などで「ヤンソンスは無難なんだけど、それだけなんだよね」とか「可も不可もない指揮者だ」というような会話を観客がしていたのを何度か耳にしたことがあります。その通りかも、と前からCDなどを聴いていて感じたことはありました。特に、今回のブルックナーではまさにその部分がもろに出た演奏だったように思います。最初から最後まで平坦なブルックナーでグッとくるものが何もありませんでした。

 もちろん、演奏はハイレベルで、そこらのオケの演奏と比較すれば素晴らしいのは言うまでもありませんが、ちょっと残念な演奏でした。指揮者にもオケにも、もっともっと研究してから挑んで欲しい曲だと思います。


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チェコ・フィル Z・マカル指揮、アルト D・ぺツコヴァ  11月26日(月) サントリーホール
曲目 マーラー交響曲第3番

 11月の締めくくりは今回のチェコフィルのマーラーでした。以前、マカル・チェコフィルの「ドヴォルザーク、新世界」を聴きに行ったとき、少し期待していた音色より薄く、軽いというか、明るい音色で、もっと素朴で柔らかい音色だったら良いのにと感じたので、あまり期待していませんでした。

 しかし、今回はさにあらず。特に、管楽器の柔らかで力強い響きに感動し、打楽器も一つ一つの音が丸みを帯びていて(恥ずかしながら今まで打楽器の音まで意識・注目がいったことがあまりありませんでした)、なんとも言えないマーラーの音楽を造り出していました。また、弦楽器も第6楽章のアダージョでは弱音の中で切々と歌う表情になんとも言えない感動を覚えました。チェコフィルとマカルがマーラーという作曲家を宝物のように思っていて、とても大事に演奏しているという感じです。

 決して派手な演奏ではないと思いますが、マーラーの色彩感のある艶っぽい表情がひそかに散りばめられていて、一音一音に込められた思いというものが伝わってくるような感動の演奏でした。指揮者とオケが揃うとこんなに感動できるのだと感じました。




<オペラ>

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チューリッヒ歌劇場  F・ウェルザー=メスト指揮  
ヴェルディ「椿姫」 9月5日(水) オーチャードホール

ヴィオレッタ E・メイ、ジョルジョ・ジェルモン L・ヌッチ、アルフレード・ジェルモン P・ベチャーラほか

 この上演で一番良かった印象はエヴァ・メイのヴィオレッタを聴けたことでした。とにかく、歌、演技、容姿と三拍子そろっていて、変に凝った演出がなかったので、エヴァ・メイのヴィオレッタそのものを十分に堪能できました。歌は、やわらかい声で、繊細な表現が非常にうまく、ヴィオレッタの喜び、悲しみ、苦しみなどが声を通じて伝わってきました。また、頭からつま先まで神経の通った演技で聴衆を魅了していたと思います(演技ができる歌手はとても少なく、歌、演技と揃っているソプラノ歌手は他にB・フリットーリ位しか思い浮かびません)。

 あと、オケですが、やはりイタリアのオペラハウスのオケよりはスマートにまとまっていて、技術レベルも高く、うまく歌手をサポートする感じで、W=メストともども、過不足なくとても聴き易くいい感じの演奏でした(よく歌手の邪魔をするオケ・指揮者がいます)。


ベルリン国立歌劇場 D・バレンボイム指揮
モーツァルト「ドン・ジョバンニ」 10月2日(火) 東京文化会館
ドン・ジョバンニ P・マッティ、ドンナ・アンナ A・サムイル、ドンナ・エルヴィーラ A・ダッシュ、レポレロ H・M=ブラッハマンほか

シェーンベルグ「モーゼとアロン」 10月15日(月) 東京文化会館
モーゼ S・フォーゲル、アロン T・モーザーほか

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」 10月17日(水) NHKホール
トリスタン C・フランツ、イゾルデ W・マイアー、マルケ王 R・パペほか

 NBS(財団法人日本舞台芸術振興会)の主催するオペラはいつもオケ、指揮者、歌手ともに質が高く、他のところが主催する公演よりいい公演に出会える確率が高いように思います。

 今回も指揮者と歌手が抜群でした。オケは後で述べるドレスデンにはやはり音色も技術も及ばないとは思いますが、バレンボイムの指揮と各公演の高レベルの歌手がそれを補って余りある活躍をしていたと思う(もちろんオケだって普通の歌劇場よりは断然レベルは高いです)。また、今回は演出による自己主張がさほど強くなかったので、オペラ通の人には物足りなかったかもしれないですが、私には演出にあまり歌手が邪魔されずに歌えてよかった(トリスタンでは歌いにくい演出がかなりあったと感じましたが)と思います。

 ワーグナーに関してはかなり大きな感動を味わえた名演でしたので、後日改めてドレスデン国立歌劇場のワーグナー公演と比較したものを寄稿する予定です。他の演目についても、とにかくバレンボイムによるオケの推進力が素晴らしく、モーツァルトもシェーンベルグも非常に楽しく聴けました。

 特に、シェーンベルグは事前のCDでは、曲があまり好きでなく聴くのに苦痛を感じるくらいだったのですが、それでもバレンボイムの演奏の素晴らしさが伝わり、聴いていてどんどん引き込まれるような演奏でした。もう少し自分が曲を理解していればもっと何倍も楽しめただろうと思います。

ドレスデン歌劇場 準・メルクル指揮
ワーグナー 「タンホイザー」  11月17日(土) 東京文化会館

タンホイザー R・ギャンビル、エリザベト C・ニールンド、ヴォルフラム アラン・タイトス、ヴェーヌス E・ヘルリツィウス

 公演前月になって、指揮者がルイジからメルクルに変更された影響かどうかはわかりませんが、今回のメルクルの演奏はかなり安全運転的な演奏だったように感じました。変にこねくり回すよりはずっと良いと思いますが、せっかくのドレスデンのワーグナーなのに、26年振りなのに、ちょっと物足りないと感じた人は私一人ではなかったのではと思います。

 でも、滋味あふれる燻し銀ドレスデンシュターツカペレの演奏で、ワーグナーのオペラを生で日本に居ながらにして聴けるというのはなんとも幸せなことだなと感じます。バレンボイムのワーグナーを聴いた後だったので、歌手陣にしろ、オケにしろ、なかなか評価は厳しくなってしまいますが、歌手陣の中では、出番は少ないですがヴェーヌスのヘルリツィウスが妖艶な雰囲気と声で存在感を示していました。
 なお、来月に寄稿する予定のベルリン歌劇場のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の感想の中でもう少し感想を述べる予定です。


以上、とりとめもなく感想を書きましたが、今回紹介したコンサートは厳しいコメントもありますが、どのコンサートも相応にいい演奏を聴けたことは確かです。チケット代がもったいないと感じてしまうような演奏会は一つもなかったですし、むしろみな素晴らしい演奏会でした。ただ、期待の大きかったドレスデンやバイエルンで期待したとおりにいかなかったので厳しいコメントになったのです。また、筆者個人の主観性が非常に強い感想ですので、読者の皆さんにはこんな聴き方をする人もいるのだなくらいに考えていただけるとありがたいです。

さて、個人的には今秋の秀逸の演奏はオケではミュンヘンフィル、オペラではベルリン国立歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」が群を抜いていたように感じました。大きな感動を味わえたこの2公演を中心に、後日改めてもう少し詳しい感想を寄稿したいと思います。

【DORADORA氏のプロフィール】

 アマチュアファゴット演奏キャリア約10年。うち4年は店長とともに演奏。ここ3年間、オペラを含めたクラシックコンサートに年平均40回程度足を運んでいる。数多の演奏を体感した上で、独自の切り口による感想は、楽しくユーモラスで好評を博す。
 しかし、以前は多忙を極め年数回程度のコンサート通いがやっとだったとか。

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