作家紹介
名絵師 【上田さかえ】 九谷焼
● 上田さかえ さん
豊かな穀倉地帯から日本海に注ぐ手取川沿いに、その源となる北陸の名峰・白山に向かってたどってゆくと、両岸から少しずつ山が迫ってきます。平坦だった道がゆるやかなアップダウンを繰り返すようになると、そこはもう谷の入り口。
日本海からつづく平野に別れを告げ、しばらく谷地を先に進むと、山あいの小さな盆地のような里、一向宗で有名な旧鳥越村にたどり着きます。更にここから尾根伝いに西に分け入って上っていくと、豊かな緑の自然に囲まれた赤屋根の山荘が見えてくるのです。
このロッジ風の赤屋のアトリエが、九谷焼の名絵師 上田さかえさんと、陶芸作家吉田さんの『工房われもこう』です。流れる水、渡る風の心地よさが、上田さかえさんの作風を象徴するかのようです。
● 枠組みを超えた表現手法
既に江戸末期には工程毎に細分専業化されていた九谷焼では、絵付けを専門とする絵師達は、それぞれ得意な絵柄が決まり、専業化していることが多いのです。例えば、幾何学模様・花鳥風月・牡丹柄など・・・絵師達がそれぞれ極めた職人技で得意な柄の絵付けを続けるのが一般的です。
幼い頃から絵に親しみ、描くことが大好きだった上田さかえさんも、他の伝統絵師達と同様に素晴らしい伝統柄で絵付けをするのですが、素晴らしいのはそれだけではありません。
上田さかえさんは、彼女が見て、イメージしたものを、筆先からほとばらせるように活写するのです。
何の下書きも無しに、インスピレーションからダイレクトに描き出される作品は、時として九谷焼の枠を超え、あらゆるモノが彼女のキャンパスとなってしまいます。そんな彼女の作品には、「千椿」という銘が与えられます。
(一文字のときは、「椿」)
陶芸作家、というより造形作家と言った方が相応しい、吉田さんの陶芸作品と上田さかえさんの彩絵とのコラボレーションはそういった作品のひとつといえます。
● 音楽と絵画の新たな出会い
そしていま、2年余りにわたる上田さかえさんと音楽雑貨店プレリュードの対話の中から、上田さかえさんの中で鳴り響きはじめた音楽イメージが、あらゆる枠組みを超えた作品となって溢れ出します。
試作中のオリジナルの手描きドレスTシャツです。
魅惑の色彩と優しいタッチで素敵に仕上がっています。
もちろん洗濯に耐えるよう、特別に調整した絵の具を使っています。
● さらさらっと描き始め
アトリエで皿に絵付けする上田さかえさん。
生地に直接絵付けしてゆく勢いが、活き生きとした画風を生み出します。プリントの量産品では感じられない息吹を、彼女の作品から味わって下さい。
● 描き出される【動】
『動』のある1シーンを空間から取り出したかのような駒のイメージと、椿の静物画の対比が素敵な和風タペストリーです。
●仕上がり
皿の絵が大分仕上がりました。素焼きの生地に呉須という絵の具で描いた絵は、焼き上がると染付けと呼ばれるコバルト色の美しい絵に仕上がります。
● 作品の一例
九谷焼と言えば『五彩』と云われるほど、時として華美すぎるまでに絢爛豪華な色遣いが特徴の1つとされます。
しかし上田さかえさんは、必要最低限の色彩に留め、染め付けを中心とした多様な筆遣いによって、表情豊かで潤いのある世界を表現しています。
● アトリエの風景
自然の風と光を感じながら創作に打ち込める工房『われもこう』は、上田さかえさんならではのアトリエだと思います。
プレリュードで取扱中の、上田さかえさんの作品はこちらです。
● 近頃のお気に入り
【駒】は、近頃上田さかえさんがお気に入りのモチーフの1つです。
- 2018.04.02
- 06:55
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